腸内環境とストレス(2)
2020年5月28日
私たちの大腸内には腸内細菌が住み着いており、その細菌たちの生態系を腸内フローラといいます。
腸内細菌は私たちの体の働きにさまざまな影響を与え、健康状態や病気の発症などとの関連が注目されています。体にとって有益であると考えられる細菌は善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌など)、有害な影響を与える細菌は悪玉菌(ブドウ球菌やウェルシュ菌など)と呼ばれています。
腸内細菌は、バランスを保ちながら共存しています。腸内フローラのバランスが崩れるとおなかが張ったり、便秘や下痢になったり、肌が荒れたりと体調を崩しやすくなりますが、ストレスとの関係もわかっています。
そこで、睡眠やストレス、食事などから「生活習慣病としてのうつ病」を専門とする心療内科医の田中奏多(たなか・かなた)先生に「腸内環境とストレスの関係」をテーマにお話を伺いました。全4回。
--腸内環境を整えるための習慣について教えてください。
田中奏多先生(以下、田中):腸内細菌は腸内細菌同士の内部の影響や、食事をはじめとするさまざまな生活習慣などの外部の影響が複雑にからみ合った結果、個人ごとにそれぞれ異なった構成をしていると考えられています。
--腸内環境も個性があるのですね。
田中:そうですね。また、年齢によっても違います。人間は出生後、初めて外界の細菌に接触し、徐々に腸内に細菌が住み着くことで腸内フローラが形成されます。
生まれて3~4時間後は大腸菌、連鎖球菌、ブドウ球菌のような好気性菌(生きるために酸素を必要とする細菌)が見られますが、その後、好気性菌数は減少し、ビフィズス菌が優勢になります。離乳後は嫌気性菌(生きるために酸素を必要としない細菌)が定着し、成人型へと移行します。高年齢になるとビフィズス菌は減少し、腸内フローラの多様性が少なくなります。
ただ、お年を重ねたから腸内フローラがダメになったということはありません。腸内フローラの構成は生活習慣、ストレス、環境に大きな影響をうけます。食事の内容や睡眠リズムなどの生活習慣を見直すことで腸内環境は変化するので、この機会に食生活や日常生活での習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
--まず、食生活で意識したほうがいいことを教えてください。
田中:食事については、栄養バランスがよく、腹八分目の食事を意識しましょう。バランスが偏った食事は腸内フローラの偏りも生じさせ、バランスを崩してしまいます。また、食べ過ぎや寝る直前の食事も腸の負担になります。消化の負担を減らし、唾液中の消化酵素を食べ物と良く混ぜ合わせるためにもよく噛(か)んで食べるようにしましょう。
--ほかに気をつけることはありますか?
田中:アルコールについては飲みすぎないことですね。アルコールの過剰摂取は消化管に悪影響を及ぼしたり、胃がんを引き起こすピロリ菌に関わると考えられています。
タバコも腸内環境のためには、控えたほうがいいでしょう。喫煙をすると腸内フローラに悪影響を及ぼします。喫煙は腸内細菌だけでなく、口腔内の菌叢(きんそう)にも影響を及ぼすことが知られています。
田中:また、ストレスが多い生活も悪玉菌を増やすことにつながります。休みが少なかったり、ストレスがたまったりすると、交感神経が優位な状態が続いてしまい、腸内環境にとってはよくありません。1日の終わりや週末に、リラックスタイムをとる生活を心がけましょう。
参考文献
「一般社団法人 茨城県メディカルセンター」HP