NMNインタビュー第1回
2021年10月8日
「人生100年時代」と言われ、長く生きることが当たり前となった現代において、いつまでも健康な状態で自分らしく年を重ねていけるかに私たちの関心は集まっています。
近年の研究により、老化制御の可能性※を秘めた成分として話題になっているのが「NMN」という成分です。
※in vivo試験の結果による
NMNって何? どんなメカニズムなの? 食事からとることはできないの?
そこで、日清製粉グループ・日清ファルマ株式会社の社員で農学博士の中山優也(なかやま・ゆうや)さんにNMNについて連載形式でお話を伺います。
第1回目のテーマは「NMNって何?」です。
--最近メディア等でNMNという成分が注目されていますが、いったいどのような成分ですか?
中山優也さん(以下、中山):「NMN」は、「ニコチンアミドモノヌクレオチド」という成分の頭文字をとったものです。世界中の研究者たちから「次世代成分」として注目されていて、あらゆる生物の体内で自然につくられている物質です。
2011年にワシントン大学の今井眞一郎教授らの研究で、生後2年のマウス(ヒト年齢で約60歳)に1週間投与すると、様々な機能が改善したことで一躍有名になりました。
--NMNは食べ物にも含まれているのでしょうか?
中山:NMNはナイアシンと呼ばれるビタミンB3から作られる物質です。ブロッコリーや枝豆、アボカドなどに含まれているのですがごくわずかなので、サプリメント等でとるのが効率的だと思います。
--NMNが体内で働く仕組みを教えてください。
中山:摂取したNMNは、血液を通じて全身に運ばれ、細胞の中に取り込まれて「NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」という物質に変わります。NADは、細胞内のミトコンドリアにおけるエネルギー産生に欠かせない補酵素です。※
※in vivo試験の結果による。
--補酵素というのは?
中山:酵素を補う役割の成分で、英語では「コエンザイム」と言います。
--コエンザイムは聞いたことがあります。
中山:そもそも酵素は食べ物の消化や分解、エネルギー生産で重要な役割をするのですが、酵素の中には単体では働くことができず、酵素の働きをサポートする成分が必要なものがあります。その働きをサポートする成分が補酵素です。補酵素の多くはビタミンから作られます。
NMNに話を戻しましょう。体内のNAD は加齢とともに減少するため、エネルギーを生み出す力も低下することから、若い頃には感じなかった変化が体に現れます。減少したNADを補うため、NADそのものを摂取しても、体内には吸収されません。そのため、体内でNADに変換されるNMNを摂取することが重要であると考えております。いつまでも元気でいるためにはエネルギーを生み出す力を維持させる必要があります。
出典:Mills et al. Cell Metab.2016; 24(6); 795-806.より改変
--そのためにNMNを摂取するということなのですね。
中山:そうですね。NADは、近年の研究から長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)との関連性が報告※されております。長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)は2000年に酵母から発見された遺伝子で、その成果を科学誌「ネイチャー」が掲載したことで世界的なニュースとなりました。その後解明が進み、同研究により、カロリー制限と長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)の活性化や寿命との関連が研究されています。
※in vivo試験の結果による
--ということはご飯もおなかいっぱいに食べないほうがいいということでしょうか?
中山:そうですね、よく腹八分目と言いますが、長寿のためには理にかなっているということですね。
--よくわかりました。次回は「NMNが注目されている理由」について伺います。