NMNインタビュー第2回
2021年10月8日
「人生100年時代」と言われ、長く生きることが当たり前となった今、いつまでも健康な状態で自分らしく年を重ねていけるかに私たちの関心は集まっています。
近年の研究により、老化制御の可能性※を秘めた成分として、世界中の研究者達から注目を集めているのが「NMN」という成分です。
※in vivo試験の結果による
NMNって何? どんなメカニズムなの? 食事からとることはできないの?
そこで、日清製粉グループ・日清ファルマ株式会社の社員で農学博士の中山優也(なかやま・ゆうや)さんにNMNについて連載形式でお話を伺います。
第2回目のテーマは「NMNが注目されている理由とは?」です。
--前回は「NMNって何?」をテーマにお話を伺いました。近年、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)が注目されている理由は何でしょうか?
中山優也さん(以下、中山):NMNを用いた様々な研究が行われてきたことや原料が供給できるようになってきたことが大きいと思います。また、それらを受けてテレビや雑誌等のメディアで注目度が高まってきております。
--具体的な研究結果はあるのでしょうか?
中山:近年の研究では、NMNを1年間投与すると加齢により発症するさまざま疾病リスクの改善にNMNが有効※であることが分かりました。今回、いくつか事例をご紹介します。
※in vivo試験の結果による。
まずはアルツハイマー型認知症についてです。アルツハイマー型認知症は、アミロイドβ と呼ばれるゴミのようなタンパク質が脳に溜まり、細胞死が起こることが一因で発症します。
アルツハイマー型認知症モデルにNMNを投与した試験では、空間学習認知機能と記憶力がアルツハイマーを発症していないモデルと同じ程度のレベルに回復しました。さらに、アミロイドβ の産生や慢性老人班、シナプスの喪失、炎症反応を減少させる効果も確認できたことから、NMNはアルツハイマー型認知症にも影響を及ぼす可能性があります。
つづいて動脈硬化、心筋梗塞についてです。血管は年齢を重ねるにつれて弾力を失い、厚くなったり硬くなったりして血液の通り道が狭くなります。これが、動脈硬化です。血液の流れが悪くなり血管が詰まると、心筋梗塞などの深刻な病気にもつながりかねません。
この試験で血管の状態が衰えた高齢の治療モデルにNMNを投与したところ、動脈の柔軟性の改善や酸化ストレスの増加が抑えられることがわかりました。
最後はⅡ型糖尿病についてです。Ⅱ型糖尿病は、カロリー過多や肥満、加齢によって血糖値を下げるホルモン「インスリン」が十分に働かなくなることにより発症する病気です。この時、体内ではNADがたくさん消費され、NAD量が低下した状態にあります。
II型糖尿病のモデルにNMNを投与すると、NAD量が回復し、インスリンの効果が高まり、病態が改善することがわかりました。この結果からNAD量の低下がインスリンの効きが悪くなる要因の一つだと考えられます。
ヒト試験では、NMNの経口投与による安全性とインスリン感受性の改善が確認されています。インスリンの感受性については、2021年4月にアメリカの権威ある科学誌『サイエンス』にワシントン大の研究グループが行った研究結果が発表され、話題になりました。
--ヒト試験もされているのですね。
中山:そうですね。このように徐々にNMNの効果が解明されてきていますが、まだ分かっていない部分があると思いますので、さらなる機能性の解明が期待されます。
--まだまだ解明されていないことが多いのですね。今後の研究に期待ですね。今できることとして、NMNの摂取とともに生活習慣や運動などやったほうがいいことはありますか?
中山:NADはすべての生物にとってエネルギー産生の際に必要な物質ですが、加齢とともに減少します。加齢以外の減少要因の一つとして脂肪分の高い食事が挙げられます。
そういうわけで、食生活を見直し、バランスのとれた食事を心がけていただければと思います。ただし、私は食べることが大好きなので”おいしく・楽しい食事”も必要だと思っています。